近・現代史 / 日露戦争がよくわかる本


今年2005年は、日露戦争戦勝百周年となる。こうした記念すべき年ということもあるのか、ここ最近、日露戦争に関連する書物の出版が多いように思う。本書は、昨年出版されたものだが、この戦争を知る非常にわかりやすいガイドブックだ。
現在の視点から考えれば、維新断行後四十年も経っていない新興国「日本」が、国力十倍のロシアに戦争を挑むなど、暴挙としか思えない。しかし、当時の日本の指導者たちは、じつに、したたかに、この戦争を指導していた。まず、開戦前から、戦争集結の折には和平仲介の労をアメリカにとってもらおうと、緻密な外交戦術を展開している。また、巧みな世論誘導や、海外での戦費調達にも成功している。そして、多大の犠牲を払った旅順攻略をはじめ、バルチック艦隊を迎え撃った日本海会戦など、重要な戦闘でも勝利を収めている。まさに、政治、経済、軍事が、踵を接して、国難を乗り切ったといっていい。
この戦争を有利な状況で集結させたことにより、日本は、晴れて欧米列強国と肩を並べる存在となり、国家として、ひとつの完成状態を迎えたといってもいいだろう。
国難とはいかに乗り切るべきか…。危機管理とはどうあるべきなのか…。明治の指導者たちから、我々現代人は、まだまだ多くを学ばなければいけないようだ。

著者/太平洋戦争研究会  出版社/PHP文庫